調剤薬局の売却 — 相場はいくらか、いつ売るべきか
薬局未来総研 | 2026年10月
薬局を売却するかどうかを考え始めたオーナーが最初に知りたいのは、「いくらで売れるのか」と「いつまでに動けばいいのか」の2つです。このページはその2つに、公開情報と一次資料だけで答えます。
売却相場 — 値段はこう決まる
営業権(のれん)は、実質利益——経常利益に役員報酬の取りすぎ・取らなすぎを調整したもの——の3〜5年分が目安とされてきましたが、報酬改定の環境悪化を受けて、現在は3年分程度が標準ラインに下がっています。公開事例では、月間技術料100万〜230万円規模の1店舗で営業権1,700万〜1,800万円程度。
同じ売上でも、売却価格は次の4つで数千万円変わります。
| 要素 | 高く売れる | 安くなる・売れない |
|---|---|---|
| 技術料比率 | 高い | 低い(薬価差益頼み) |
| 処方箋集中率 | 分散している | 1医院に90%超依存 |
| 薬剤師 | 譲渡後も残る | オーナー1人薬剤師 |
| 基本料・加算 | 基本料1+地域支援体制加算 | 基本料2/3・特別調剤基本料 |
売り時 — なぜ「2028年度改定の前」なのか
営業権が「実質利益の3年分」で値付けされる以上、改定で利益が削られると、営業権はその3倍の幅で削られます。そして次の2028年度改定に向けて、財務省は2026年4月の財政制度等審議会で、2026年改定で新設された「門前薬局等立地依存減算」の対象拡大と、調剤基本料1の適用範囲の縮小を既に提言しています。
さらに、2025年12月に誕生した国内最大のドラッグストア連合(ウエルシア×ツルハ、5,600店超)の買収攻勢が本格化すると、売り案件は増え、買い手は選ぶ側に回ります。改定前に売る人は条件を選べ、改定後に売る人は条件を飲む——これが過去の改定サイクルで繰り返されてきた非対称性です。
譲渡の実務は、打診から引き渡しまで標準で6〜10ヶ月(意向整理→仲介契約→買い手打診→基本合意→デューデリジェンス→最終契約→薬機法・保健所手続き→引き渡し)。2028年度改定前に終えるなら、2027年前半の着手が実務上のデッドラインです。
よくある質問
- Q. 廃業と売却はどちらが得ですか?
- 営業権が付く状態なら売却です。廃業は在庫・内装の処分費と退職金負担が残るのに対し、売却は営業権を受け取る側に回ります。ただし買い手が付かない立地・業態では廃業しか選べなくなるため、「売れるうちに判断する」ことが全てです。
- Q. 従業員・薬剤師の雇用は引き継げますか?
- 多くの案件で雇用承継が条件に含まれ、買い手にとっても薬剤師の残留は価格を上げる材料です。「薬剤師が残る薬局」はむしろ高く売れます。
- Q. 門前の医院が閉院しそうでも売れますか?
- 処方箋の供給源が失われる見込みの薬局は、値付けが大きく下がるか買い手が付きません。門前医院の院長の年齢と継承計画は、薬局側の売り時を決める最重要変数の一つです。院長が高齢で後継未定なら、薬局側が先に動く必要があります。
- Q. 誰にも知られずに相談できますか?
- 売却検討が従業員や門前医院に漏れることは、それ自体が経営リスクです。初期相談は匿名ベースで行うのが業界の標準です。
承継自己診断(10問)
- 後継者は決まっているか
- 決まっていない場合、自分は何歳まで薬局に立つつもりか
- 処方箋集中率は90%を超えていないか
- 門前の医療機関の院長は何歳か
- 調剤基本料の区分はどれか
- 地域支援体制加算は取れているか
- 薬剤師は自分以外に何人いて、譲渡後も残るか
- 直近3期の実質利益(役員報酬調整後)を即答できるか
- 自局の営業権の概算を把握しているか
- 改定が2回来ても耐える資金繰りか
3つ以上即答できなければ、売る・残るのどちらを選ぶにしても判断材料が不足しています。
自局の営業権の概算と、売る場合・残る場合の選択肢整理にお答えします。
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